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東京高等裁判所 平成8年(行コ)62号 判決

控訴人

チョンヒャンギュン

(鄭香均)

右訴訟代理人弁護士

新美隆

平湯真人

虎頭昭夫

金敬得

梁文洙

被控訴人

東京都

右代表者知事

青島幸男

右指定代理人

友澤秀孝

外三名

主文

一  原判決中の控訴人が平成七年度及び平成八年度の各管理職選考試験中選考種別Aの技術系医化学の受験資格を有することの確認を求める訴えを却下した部分に対する控訴をいずれも棄却する。

二  原判決中の控訴人の金員請求を棄却した部分を次のとおり変更する。

1  被控訴人は、控訴人に対し、金四〇万円並びに内金二〇万円に対する平成六年三月一〇日から、及び内金二〇万円に対する平成七年五月二八日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  控訴人のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、第二審を通じて、これを四分し、その一を被控訴人の、その余を控訴人の各負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  控訴人が平成七年度及び平成八年度の各管理職選考試験中選考種別Aの技術系医化学の受験資格を有することを確認する。

3  被控訴人は、控訴人に対し、二〇〇万円並びに内金一〇〇万円に対する平成六年三月一〇日から、及び内金一〇〇万円に対する平成七年五月二八日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、第一、第二審とも、被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は、控訴人の負担とする。

第二  当事者の主張

当事者の主張は、次のとおり訂正し、付加し、又は削除するほかは、原判決の「第二 事実の概要」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

一  原判決五頁六行目の「実施要綱」」の次に「(以下「平成六年度実施要綱」という。)」を、同一〇行目の「選考の種別A」の次に「(以下「選考種別A」という。)をそれぞれ加える。

二  原判決六頁五行目から同六行目にかけての「実施要綱」」の次に「(以下「平成七年度実施要綱」という。)及び平成八年度管理職選考実施要綱(以下「平成八年度実施要綱」という。)」を、同七行目の「五号証」の次に「及び弁論の全趣旨」をそれぞれ加え、同八行目の「管理職選考」を「被控訴人においては、課長級の職への管理職選考(以下「管理職選考」という。)」と、同行目の「実施要綱」を「管理職選考を行う年度ごとに管理職選考実施要綱」と、同九行目の「事務処理」を「右管理職選考に関する事務処理」とそれぞれ改め、同一一行目の「(以下において」から同七頁一行目末尾までを削る。

三  原判決七頁三行目の「平成六年度管理職選考の種別A」を「平成六年度実施要綱に基づいて実施される管理職選考(以下「平成六年度管理職選考」といい、平成七年度実施要綱及び平成八年度実施要綱に基づいて実施された各管理職選考をそれぞれ「平成七年度管理職選考」、「平成八年度管理職選考」という。)の選考種別A」と改め、同五行目の「小川嘉一」の次に「(以下「小川副所長」という。)」を加え、同九行目の「同年」を「平成六年」と、同一一行目の「平成七年度において、同年度管理職選考実施要綱」を「平成七年度管理職選考について、実施要綱」とそれぞれ改める。

四  原判決八頁一一行目の「右のほかに」の次に「、直接には事案の決定権限を有しないが、事案の決定過程に関与する」を加える。

五  原判決九頁一行目の「がある。」から同二行目の「いるが」までを「がおり」と、同三行目の「職務」から同四行目の「ただし」までを「職務を行い、事案の決定権限を有せず、事案の決定過程に関与する蓋然性も少ない管理職も若干存在している。ところで」と、同六行目の「選考」を「管理職選考」とそれぞれ改め、同一一行目の「長沼友兄」の次に「及び弁論の全趣旨」を加える。

六  原判決二八頁六行目の「認めるべき」を「認めるべきである」と改める。

第三  証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の本件請求のうち、控訴人が平成七年度及び平成八年度の各管理職選考の受験資格を有することの確認を求める部分は、確認の利益がなく、訴えを却下すべきであり、管理職選考を受験することができなかったことを理由として慰謝料の支払を求める部分は、四〇万円並びに内金二〇万円に対する平成六年三月一〇日から、及び内金二〇万円に対する平成七年五月二八日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、認容すべきであり、その余は理由がないから、棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり訂正し、付加し、又は削除するほかは、原判決の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決三八頁五行目の「当該年度の試験は実施ずみ」を「同年度の管理職選考は同年五月二八日に実施済み」と、同八行目から同三九頁八行目までを次のとおりそれぞれ改める。

「 また、平成八年度の管理職選考の受験資格の確認を求める点についても、東京都人事委員会は平成七年度実施要綱におけると同様の内容の平成八年度実施要綱を定めて、既に同年度の管理職選考を実施済みであることは弁論の全趣旨により明らかであるから、前同様確認の利益がないといわざるを得ない。」

2  原判決四〇頁三行目の「おいては、」の次に「控訴人が」を加え、同六行目の「配布」を「配付」と、同八行目の「被告の右の各措置」を「被控訴人が控訴人が日本国籍を有しないことを理由に平成六年度及び平成七年度の各管理職選考を受験させなかったこと」と、同九行目から同五三頁一行目までを次のとおりそれぞれ改める。

「1  憲法は、その前文第一項及び第一条において、国民主権の原理を明らかにしている。この国民主権の原理の下における国民とは、日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味することは明らかである。そうとすれば、公務員を選定罷免する権利を保障した憲法第一五条第一項の規定は、その権利の性質上日本国民のみをその対象としたもので、右規定による権利の保障は、我が国に在住する外国人には及ばないものと解さざるを得ない。また、憲法第九三条第二項は、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙すると規定しているが、前示の国民主権の原理及びこれに基づく憲法第一五条第一項の規定の趣旨にかんがみ、かつ、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素をなすものであることを併せ考えると、憲法第九三条第二項にいう住民とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味し、我が国に在住する外国人は、右規定による権利を保障されていないと解するのが相当である。したがって、憲法第一五条第一項又は憲法第九三条第二項の規定による保障が我が国に在住する外国人にも及ぶことを前提として、我が国に在住する外国人も、憲法上、国又は地方公共団体の公務員に就任する権利が保障されているということはできない。もっとも、憲法のこれらの規定は、右のとおり、我が国に在住する外国人に対して国及び地方公共団体の公務員を選定罷免し、又は公務員に就任する権利を保障したものではないけれども、我が国に在住する外国人について、公務員に選任され、就任することを禁止したものではないから、国民主権の原理に反しない限度において我が国に在住する外国人が公務員に就任することは、憲法上禁止されていないものと解すべきである。

なお、我が国に在住する特別永住者は、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により、我が国に永住する資格を付与された者であるが、これにより日本国籍を有するに至ったわけではないから、特別永住者であることをもって、憲法上の主権者すなわち日本国民と同視することはできない。したがって、我が国に在住する特別永住者も、国民主権の原理に反しない限度において国又は地方公共団体の公務員に就任することができるにすぎないものというべきである。

2 ところで、憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、外国人にも等しく及び、憲法第二二条第一項の職業選択の自由、第一三条の幸福追求の権利、第一四条第一項の平等原則の規定についても、原則として、その保障が及ぶものというべきある。

3 そこで、次に、右1及び2に述べたところを踏えて、我が国に在住する外国人がどの限度で国又は地方公共団体の公務員に就任することができるかについて、少し具体的に検討する。

前示のとおり、憲法は、国民主権の原理を国家統治の基本原則として採用している。このことは、単に公務員の選定罷免の場面についてのみ日本国民が関与すれば足りるとするのではなく、我が国の統治作用が実質的に主権者である日本国民によって行われること、すなわち、我が国の統治作用の根本に関わる職務に従事する公務員は日本国民をもって充てられるべきことを要請しているものと解される。

そこで、まず、国の公務員をその職務内容に即してみてみると、国の統治作用である立法、行政、司法の権限を直接に行使する公務員(例えば、国会の両議院の議員、内閣総理大臣その他の国務大臣、裁判官等)と、公権力を行使し、又は公の意思の形成に参画することによって間接的に国の統治作用に関わる公務員と、それ以外の上司の命を受けて行う補佐的・補助的な事務又はもっぱら学術的・技術的な専門分野の事務に従事する公務員とに大別することができる。そして、右のうち、第一の種類の公務員は、国の統治作用に直接に関わる公務員であるから、これに就任するには日本国民であることを要し、法律をもってしても、外国人がこれに就任することを認めることは、国民主権の原理に反するものとして、憲法上許されないものというべきである。また、第二の種類の公務員は、これも、国の統治作用に関わる職務に従事するものではあるが、その関わりの程度は、第一の種類の公務員に較べれば間接的であり、しかも、その職務内容は広範多岐にわたり、関わりの程度も強弱様々であるから、憲法が、そのすべての公務員について、これに就任するには日本国民であることを要求していて、外国人がこれに就任することを一切認めていないと解するのは相当でなく、右第二の種類の公務員については、その職務の内容、権限と統治作用との関わり方及びその程度を個々、具体的に検討することによって、国民主権の原理に照らし、外国人に就任を認めることが許されないものと外国人に就任を認めて差支えないものとを区別する必要がある。これに対し、第三の種類の公務員は、その職務内容に照らし、国の統治作用に関わる蓋然性及びその程度は極めて低く、外国人がこれに就任しても、国民主権の原理に反するおそれはほとんどないものといえよう。そして、このようにみてみると、国の公務員にも我が国に在住する外国人の就任することのできる職種が存在するものというべきであり、この我が国に在住する外国人が就任することのできる職種の公務員については、我が国に在住する外国人に対しても、これへの就任について、憲法第二二条第一項、第一四条第一項の各規定の保障が及ぶものというべきである。

そして、右に説示したところは、当然に、我が国に在住する外国人の地方公務員就任についても、原則的に妥当するものというべきである。ただ、憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性にかんがみ、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づいてその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解され、右趣旨にかんがみれば、我が国に在住する外国人であって特別永住者等その居住する区域の地方公共団体と特段に密接な関係を有するものについては、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させ、また、自らこれに参加していくことが望ましいものというべきである。したがって、我が国に在住する外国人、特に特別永住者等の地方公務員就任については、国の公務員への就任の場合と較べて、おのずからその就任し得る職務の種類は広く、その機会は多くなるものということができる。

4 右のとおり、憲法は、我が国に在住する外国人が国民主権の原理に反しない限度で地方公務員に就任することを禁止するものではないが、地方公務員の中でも、管理職は、地方公共団体の公権力を行使し、又は公の意思の形成に参画するなど地方公共団体の行う統治作用に関わる蓋然性の高い職であるから、地方公務員に採用された外国人が日本国籍を有する者と同様当然に管理職に任用される権利を保障されているとすることは、国民主権の原理に照らして問題があるといわざるを得ない。しかしながら、地方公務員の相当する職務は、地方自治全般にわたり広範多岐であり、したがって、管理職の職務も広範多岐に及び、地方公共団体の行う統治作用に関わる、特に、公の意思の形成に参画するといっても、その関わり方及びその程度は広狭・強弱様々なものがあり得るのであり、中には、管理職であっても、専ら専門的・技術的な分野においてスタッフとしての職務に従事するにとどまるなど、公権力を行使することなく、また、公の意思の形成に参画する蓋然性が少なく、地方公共団体の行う統治作用に関わる程度の弱い管理職も存在するのである。したがって、このように、公権力を行使することなく、公の意思の形成に参画する蓋然性も少ない管理職を含めてすべての管理職について、国民主権の原理によって外国人をこれに任用することは一切禁じられていると解することは相当でなく、ここでも、職務の内容、権限と統治作用との関わり方及びその程度によって、外国人を任用することが許されない管理職とそれが許される管理職とを分別して考える必要がある。そして、後者の管理職については、我が国に在住する外国人をこれに任用することは、さきに公務員就任について検討したところと同様、国民主権の原理に反するものではなく、したがって、憲法第二二条第一項、第一四条第一項の規定による保障が及ぶものと解するのが相当である。

5  ところで、被控訴人の管理職としては、前記のとおり、東京都事案決定規程(乙第三号証)により知事の権限に属する事務に係る事案の決定権限を有する知事又は出納長若しくは局長、部長若しくは課長のほかに、直接には事案の決定権限を有しないが、事案の決定過程に関与する次長、技監、理事(局長級)、参事(部長級)、副参事(課長級)等、さらには、計画の企画や専門分野の研究を行うなどのスタッフとして職務を行い、事案の決定権限を有せず、事案の決定過程に関わる蓋然性も少ない管理職も若干存在している。ちなみに、被控訴人における平成九年四月一日現在の一般管理職(警視庁及び消防庁を除く。)の総数は約二五〇〇であり、そのうち知事部局等では、事案の決定権限を有する管理職は約一六五〇、事案の決定権限は有しないが、事案の決定過程に関与する管理職は約二三〇、公営企業では、前者が約三八〇、後者が約二〇、教育庁では、前者が約一二〇、後者が約七〇である(弁論の全趣旨)。このように、被控訴人の管理職にも、事案の決定権限を有しない管理職が一割強存在し、しかも、この者たちが事案の決定過程に関与するといっても、その関わり方及び関わりの程度は、広狭・強弱様々であるから、外国人の管理職任用について前述したように、被控訴人の管理職についても、一律にすべて外国人の管理職への任用(昇任)を認めないとするのは相当でなく、その職務の内容、権限と事案の決定との関わり方及びその程度によって、外国人を任用することが許されない管理職とそれが許される管理職とを区別して任用管理を行う必要があるというべきである。そして、後者の管理職への任用については、我が国に在住する外国人にも、憲法第二二条第一項の職業選択の自由や憲法第一四条第一項の平等原則の保障が及ぶことは、前述したところから明らかである。

そして、控訴人が受験しようとした管理職選考は、被控訴人の職員として採用された者のうち、知事、公営企業管理者、議会議長、代表監査委員、教育委員会、選挙管理委員会、海区漁業調整委員会又は人事委員会が任命権を有する職員に対して、課長級の職への第一次選考としてされるものであり、右管理職選考に合格した場合は、候補者名簿に登載され、数年後、最終的な任用選考を経て、課長級の職に昇任することになっているのである。

そうすると、課長級の職に昇任するためには、管理職選考を受験する必要があるのであり、しかも、さきにみたところによれば、課長級の管理職の中にも、外国籍の職員に昇任を許しても差支えのないものも存在するというべきであるから、外国籍の職員から管理職選考の受験の機会を奪うことは、外国籍の職員の課長級の管理職への昇任の途を閉ざすものであり、憲法第二二条第一項、第一四条第一項に違反する違法な措置であるといわなければならない。

6  そこで、被控訴人による控訴人の管理職選考受験拒否の適否について検討する。

(一)  平成六年度管理職選考について

前記のとおり、控訴人は、昭和六一年に看護婦資格を、昭和六三年に保健婦資格をそれぞれ取得し、同年四月、保健婦として被控訴人に採用され、東京都日野保健所に保健婦として配属され、平成四年一一月、主任試験に合格し、平成五年四月、四級職となり、右同月から、東京都八王子保健所西保険相談所に配属され、保健婦として勤務していたから、控訴人は、平成六年度実施要綱で定める別表1に記載された職種の一つである保健婦としての職務に従事していて、平成七年三月末日現在、四級職にあり、かつ、その在職期間が二年以上五年未満であったものであり、平成六年度実施要綱に定める管理職選考の受験資格を満たすことは明らかである。しかるに、控訴人が、選考種別Aの技術系医化学の管理職選考の受験を希望し、同年三月一〇日、受験申込書を東京都八王子保健所の小川副所長に提出したところ、小川副所長は、控訴人が管理職選考に合格し、管理職となれば、公権力の行使や公の意思の形成に参画する職にも就くことになるが、日本国籍を有しない職員はそのような職に就くことはできないので、控訴人には右管理職選考の受験資格がないと判断して、控訴人が提出した右受験申込書の受取りを拒否し、そのため、控訴人は、同年五月二二日に実施された同年度の管理職選考の筆記考査を受験することができなかったというのである。

そして、既にみてきたところによれば、小川副所長が受験申込書の受取りを拒否することによって控訴人に平成六年度管理職選考を受験させなかった被控訴人の右措置が憲法第二二条第一項、第一四条第一項に違反する違法なものであることは、明らかである。

(二)  平成七年度管理職選考について

被控訴人は、平成七年度実施要綱(乙第五号証)においては、管理職選考の受験資格について、「日本国籍を有する別表1の職種の職員で、平成八年三月末日現在、四級職にあり、その在職期間が二年以上五年未満の人。」と定め、平成六年度実施要綱と異なり、管理職選考の受験資格として日本国籍を有することを要する旨の国籍要件を明記した。前述したところによれば、控訴人は、国籍要件を除き、右受験資格を満たすことが明らかであるが、被控訴人は、控訴人に対しては、平成七年度実施要綱及び受験申込書用紙を配付しなかったため、控訴人は、同年度管理職選考の受験申込みをすることができず、結局、同年度管理職選考を受験することができなかった。

既にみてきたところによれば、被控訴人の右措置が憲法第二二条第一項、第一四条第一項に違反する違法なものであることも、明らかである。

7  右に検討したところによれば、被控訴人が控訴人に対して平成六年度及び平成七年度の各管理職選考の受験を拒否したことは、いずれも違法な措置であったというべきであるから、被控訴人は、控訴人が右各管理職選考の受験を拒否されたことによって被った精神的損害を慰謝するため、各二〇万円を支払うのが相当である。

8  したがって、控訴人の本件慰謝料請求は、合計四〇万円並びに内金二〇万円に対する平成六年三月一〇日から、及び内金二〇万円に対する平成七年五月二八日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。」

二  よって、当裁判所の右判断と異なる原判決は一部不当であるから、これを変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官石井健吾 裁判官星野雅紀 裁判官杉原則彦)

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